【第1回】戦略を考える上で大事なこと
執筆=徳田幸修(STI 代表)
思いつきや、その場しのぎの戦略で勝ち残れる時代ではありません。自店舗(自社)の持続的な競争優位を構築するためには戦略が必要です。
店舗戦略を考える上で大事なことは、戦略の策定から戦略実行、その結果検証に至るまでのステップを踏むことです。さらに重要なことは、各ステップ間の施策に一貫した整合性が取れていることです。
ステップを踏んでいない典型的な施策の例を挙げましょう。
「新台を何台導入するか?」という皆様のホールでも日常的にある経営課題に対して、単に話題機種であるとか、近隣の競合店がX台導入するからという理由で、その新台の導入台数を決定しているのであれば、それは戦略ではなく、ただの思いつきです。
仮にその選択が成功したとしても、ステップを踏んでいないので、次の機械戦略に活用出来るようなエッセンスを得ることはできません。再び思いつきで戦略を決めることになります。
次に、整合性のない施策の例を挙げましょう。
内部分析の結果、商圏内の自店舗のスロットシェアが相対的に低いことが分かったにもかかわらず、スロット全体の市場が伸びていることを理由に話題機種を大量に導入し、思うような結果が得られなかったというケースです。
この場合、そもそも自店舗のスロットシェアが低い何らかの理由が存在するはずです。その理由を明らかにして、どのように解決するかという本質的な課題設定をしなければ、稼働向上は遠のくばかりでしょう。
本稿では全12回にわたり、経営戦略からマーケティングに至るまでのプロセスを、実際の店舗経営に落とし込んだケースで分かりやすく説明させて頂きます。ぜひ参考にしてください。その第一歩として、用語の定義について具体的な共通認識を持つ必要があります。
皆さんの社内会議でもよく「戦略的に考える」とか「マーケティングが重要」といった発言が出てくるのではないでしょうか?
では、「戦略/戦術」「マーケティング」という言葉を皆さんは具体的にどのように捉えているでしょうか? 会議に出席している全員が、同じような共通認識を持っているでしょうか?
本稿では、皆さんに共通認識を持ってもらうためにも、「戦略」と「マーケティング」を次のように定義させて頂きたいと思います。
戦略とは何か?
身近な例で説明しましょう。友達との飲み会に行ったら、気になる異性が3人いたとします。しかしあなたには、体も時間も使えるお金も限られています。当然3人全員にアタックすることは不可能です。そこであなたは最も可能性の高い1人を選んで、他の2人は諦めます。これこそが戦略です。つまり戦略とは「何をやるか」と同時に、「何をやらないか」(=戦いを略す)を決めることです。ホールの仕事でいえば、自店において「できること」と「できないないこと」を見極め、できることに集中して顧客に価値を提供することです。
マーケティングとは何か?
先程の例でいいますと、ターゲットの異性(顧客)にどう振り向いてもらう(自店の顧客になってもらう)かを具体的に考えることです。手法はアイデアの数だけありますよね。そしてそれこそが、まさしく「戦術」なのです。
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※本コラムは月刊アミューズメントジャパン2012年1月号に掲載した記事を再掲載したものです。
【執筆者プロフィール】
とくだ・ゆきのぶ
福井県出身。大阪経済大学 経営学部卒業、グロービス経営大学院卒業(MBA)。
大学卒業後、新卒採用で大阪府のパチンコホールに入社。その後、出身地に戻り3店舗のパチンコ店経営に携わり2003年から2008年まで代表取締役社長を務める。在任中に国内MBA取得。現在は、パチンコ業界の社会的地位確立・現場能力の向上をサポートするため株式会社STIを設立、人材育成に取り組む。
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